睡眠時無呼吸症候群の症状と合併症!

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。
それ故に、自分ではなかなか気付くことができず、発見が遅れてしまう場合があります。
どのような病気でも、早期発見・早期治療が重要であることは間違いありません。
特に無呼吸症候群は呼吸が止まるだけではなく、様々な症状を起こす可能性があります。
下記に睡眠時無呼吸症候群でよく見られる一般的な症状をご紹介します。
少しでも該当するものがあれば早めにご相談ください。
また合併症の危険がある病やリスク、予防法などの解説もありますので、ぜひ最後までご覧ください。

睡眠時無呼吸症候群(睡眠関連呼吸障害:SAS(Sleep Apnea Syndrome))とみられる症状

頻繁に大きないびきをかいている

いびきとは鼻から喉までの上気道のどこかで狭窄部位、つまり呼吸の通り道に細くなる部位が出現することで、呼吸をする際に発生する雑音のことを言います。
その狭窄部位が閉塞するために起こるのが、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群です。
特に大きないびきをかく人は、いびきと無呼吸を交互に発生することが多く、無呼吸症候群のサインとしては最も知られた症状となります。
いびきを自覚することは難しいですが、他人に指摘された場合などは注意が必要です。

いびきには単純性いびきといわれるものもあり、これは日中に激しい運動をして強い疲労があった場合や、風邪をひいていて鼻がつまっている場合などに発生するものです。
別に原因があるとはっきりしており、無呼吸を伴わないため大きな危険性はありません。
しかし、大きないびきを繰り替えしている方は無呼吸症候群の可能性があり、重大な危険を伴う場合があります。
いびきをかく方の7割が睡眠時無呼吸症候群だという報告もあり、「たかがいびき」と軽く考えず、まずは疑ってみることも大切です。

睡眠時、呼吸が止まっていると指摘されたことがある

「無呼吸」症候群なんだから当たり前だろ!と言われるかもしれませんが、実は医学的には以下の定義があります。

「覚醒時には呼吸障害を自覚しないが、睡眠時に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上、または、一晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸を生じる疾患」
つまり一定時間内に一定回数の無呼吸が発生した場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されるのです。
それなら少ない回数なら良いのか?と言われれば、そんなことはありません。
早期発見・早期治療を行うため、少しでも無呼吸の兆しがあれば、他の症状も確認しつつ診察を考えてみて下さい。

夜間、頻繁に目が覚める

睡眠中に目が覚めることを途中覚醒と言いますが、この場合も睡眠時無呼吸症候群でよく見られる症状の一つです。
無呼吸から息苦しさを感じて目が覚める場合もありますが、無呼吸を自覚せずに途中覚醒を繰り返す場合もあります。
前者の場合は症状を自覚しやすく無呼吸症候群の発見にも直結しますが、後者は「眠りが浅いだけ」で済ませてしまう可能性が高いです。
途中覚醒を繰り返す方は、無呼吸の自覚がなくとも注意が必要です。
慢性的に途中覚醒を繰り返している方ほど「いつものこと」と流さずに、その原因を疑ってみてください。

口や喉が渇く

就寝中だけ口の中が乾く症状を「夜間口腔乾燥症」といいます。
これは健常者でも起こりうる状態であり、必ずしも治療が必要になる病的な状態とは限りません。
しかし乾燥する原因は、口呼吸をしたり口が開いたままの状態になることで唾液が蒸発することと考えられます。
これは激しいいびきなどで促進される状態であり、口や喉が渇くことがいびきのサインであり、ひいては無呼吸症候群のサインにもなりうるのです。
誰にでも起こりうることだからこそ、見逃されがちな症状とも言えます。

睡眠時間は充分なのに、日中、強烈な眠気に襲われることがある

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が止まってしまい、身体が酸欠状態になるため睡眠が中断し、途中覚醒を起こします。
その後再び眠りについても、同じ症状を繰り返すため深い睡眠をとることができなくなってしまい、慢性的な睡眠不足の状態となってしまうのです。
この症状もまた「眠りが浅いだけ」「年齢的に疲れが取れにくいだけ」で済ませてしまう場合があります。
社会的な風潮として、昼間に眠気を訴えることは自己管理ができていない、だらしない人間だと捉えられてしまいますが、睡魔も体の変調のサインとして認識することで、早期に病を発見し治療できるかもしれません。

過去に鉄道や地下鉄の運転士が、居眠り運転で事故を起こしたことが何度かありました。
その運転士の多くは、重度の睡眠時無呼吸症候群だと診断されています。
睡眠不足は、「眠い」だけでは済まない危険性もあるのです。

起床時に頭痛が起こる

無呼吸症候群の症例として、起床時に頭痛を感じることがあります。
他にも、30分以内に痛みが消える、頭の両側が痛む両側性である、1ヶ月に15日以上発生するなどの特徴があげられます。
原因は無呼吸による低酸素血症、高炭酸ガス血症、睡眠障害によるストレスなどと考えられています。

頭痛持ちの方でも「慢性的な頭痛はあるが、特に朝がひどい」という方は、無呼吸症候群を疑っても良いかも知れません。

慢性的な倦怠感や疲労感がある

睡眠不足を繰り返すと日中の疲れが解消できず、常に疲労感や倦怠感を抱えてしまうことになります。
これは無呼吸症候群による二次的な症状となりますが、早期発見として判断しやすいサインでもあります。
また日常的に疲労感を感じることで、私生活そのものに影響が出てしまう場合もあり、決して軽視できない症状です。
ただし体質により感じにくい人もいるので、必ずしも「疲労感は無いから大丈夫」とも言い切れません。

集中力が続かない

疲労を解消できないことで常に倦怠感を持ち、また眠気に襲われることで集中力が低下してしまう場合があります。
集中力の低下は眠気と同様に、日常的な仕事や勉強での作業効率の悪化、車の運転での重大な過失に繋がる危険性があります。

高血圧や糖尿病などを患っている

睡眠中に無呼吸症状が頻繁に繰り返されると、低酸素や脳の覚醒反応などにより交感神経系が刺激され、心拍数の増加や血圧上昇をひきおこします。
それらの症状が長年にわたると、高血圧や高脂血症、糖尿病などの動脈硬化性疾患の原因になると指摘されています。
つまり、無呼吸症候群により生活習慣病を患ってしまう危険性があります。
無呼吸症候群はそれだけでも危険な病ですが、合併症として更に大きな疾患に繋がる可能性を秘めているのです。

合併症に関しての詳しい説明は後述致します。

メタボリックシンドロームと診断された

無呼吸症候群から生活習慣病に繋がる危険性を申し上げましたが、その生活習慣病がメタボリックシンドロームをさらに悪化させる可能性があります。 また同時に、メタボリックシンドロームの人は肥満によって気道が塞がれやすくなるため無呼吸症候群になる危険性が高まり、症状を重篤化させます。 つまりそれぞれの症状がそれぞれを悪化させ、悪循環に陥らせてしまうのです。 言い換えればメタボの解消が無呼吸症候群の改善になり、無呼吸症候群の治療がメタボの解消にも繋がります。 無呼吸症候群患者の約半数がメタボリックシンドロームであるとも言われていますので、特に肥満気味でいびきをかいている方は要注意です。

 

以上、睡眠時無呼吸症候群による症状をご紹介しました。
今回取り上げた症状はあくまでも一部です。
特にいびきや日中の眠気など、一つ一つを見ると軽度な症状に感じるかもしれません。
しかしその症状の原因が無呼吸症候群であり、放置することで更に重度の病に繋がると考えれば軽視はできないでしょう。
小さな気づき、一つの対応が自分を救うことになるかもしれません。
少しでも不安があれば、お気軽にご相談ください。

 

健常者と比較した合併症併発率

実際に起こり得る合併症には、どのような物が有るのでしょうか。
一例をご紹介します。

  • 糖尿病:1.5倍
  • 高血圧:2倍
  • 虚血性心疾患:3倍
  • 脳血管疾患:4倍
  • 8年後の生存率:63%

どの項目も軒並みハイリスクとなっていますが、それを象徴するかのようなデータがあります。
それが「8年後の生存率」です。
無呼吸症候群を無治療のまま放置した場合、
治療をしている患者を含む健常者に対して8年後の生存率は…。

何と63%にまで低下するといわれています!

決して脅すつもりはありませんが、無視できない数字ではないでしょうか。

 

合併症の例

睡眠時無呼吸症候群(睡眠関連呼吸障害)には、次の種類があります。

高血圧

高血圧との合併が多いことは有名です。
睡眠時無呼吸症候群患者のうち約68%もの方に高血圧の合併が観察されたとの報告があります。
また、高血圧を合併する頻度は無呼吸症候群が重症であればあるほど多く、ある研究では、重度の患者の方が軽度の患者よりも1.4倍高血圧の合併が多いということが報告されていました。

さらに、無呼吸症候群が引き起こす睡眠時の低酸素血症は、動脈硬化のリスクの一つであるとも考えられています。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、主に動脈硬化が原因で心臓の血管が細くなり引き起こされる病気のことで、心筋梗塞や狭心症などを含みます。

虚血性心疾患は高血圧同様、無呼吸症候群との関連が深いことが知られる病です。
狭心症患者の40%弱に睡眠時無呼吸症候群が認められ、睡眠時無呼吸症候群の患者が虚血性心疾患を合併する頻度は35~40%とされています。
睡眠中の覚醒や低酸素状態が頻発し、交感神経系の活動が増強されることが原因の一つと言われています。

不整脈

睡眠時無呼吸の方は、無呼吸時に脈が遅くなり、無呼吸後の過呼吸時に脈が速くなります。
これをくり返しすことで不整脈となる可能性があるのです。

糖尿病

糖尿病が合併するのは約10%、糖尿病の手前である糖代謝異常は約15%とされており、また睡眠時無呼吸症候群が重症化すると合併率が増えるのも特徴です。
そもそも睡眠時無呼吸症候群の方には肥満が多く、糖尿病にかかりやすいということも関係していると思われます

多血症

多血症とは、血液中の赤血球が異常に増えてしまう疾患です。
赤血球が減ると貧血になりますが、増えすぎると血液がドロドロになって流れが悪くなります。
特に血栓症の患者は血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなるのです。
睡眠時無呼吸症候群と多血症との関連性は高く、原因不明の多血症患者の中に高確率で睡眠時無呼吸症候群を認めたという報告もあります。

睡眠時無呼吸症候群における多血症の原因は主に2つ。
無呼吸によって、結果的に夜間尿が増えたり脱水になり血液が濃くなってしまうことによるもの。
そして無呼吸によってくり返す低酸素状態が続くことによるものです。
低酸素状態になると、エリスロポエチンというホルモンが増え、結果的に赤血球が増えることで多血症になってしまいます。

性機能障害(ED)

EDの患者に経鼻的持続陽圧呼吸療法という睡眠時無呼吸症候群の治療を一ヵ月おこなったところ、76%の患者さんでEDが改善したという報告があります。
また米国では無呼吸症候群患者の約70%弱がEDを合併しているとの報告があり、 夜間の血中酸素濃度の低下がEDの発症に大きく関連していると見られています。

うつ病

元々、うつ病と睡眠時無呼吸症候群には症状に共通する点が多くあります。 そして、うつ病患者の多くに睡眠障害がみられることから、強い関連性があると考えられているのです。

因みに睡眠障害の治療として睡眠薬を使用すると、舌の筋肉がゆるみ、舌が自重で喉の奥に落ちこんでしまうことがあります。 これにより気道が狭くなり、イビキをかいたり、閉塞して無呼吸になったりする可能性が指摘されています。 つまり睡眠時無呼吸症候群はうつ病と症状が似ていますが、うつ病の治療中に服用した睡眠薬により、無呼吸症候群の症状が悪化することがあるのです。

 

無呼吸症候群を発症しやすい人の特徴

肥満の人が睡眠時無呼吸症候群になりやすいと申し上げましたが、他にも身体的特徴により無呼吸症候群を発症しやすいといわれているものがあります。

  • 下顎が小さい
  • 下顎が後退している
  • かみ合わせが悪い

どれも口内や口周りに関する特徴ですが、これらの状態では口の中の容積が小さくなり、舌が後ろ(喉の奥)に押し出されやすくなってしまいます。
そして結果的に気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因となるのです。
顎自体は美容整形手術などが必要となる場合がありますが、下顎の後退はかみ合わせのように歯科矯正で治せる場合もあります。

 

睡眠時無呼吸症候群の予防

今は該当する症状も無いし、私は大丈夫!とお思いの方でも、いずれ発症する危険性はゼロではありません。
そこで、今後も無呼吸症候群にならないための予防法をご紹介します。
無呼吸症候群の症状悪化を抑える場合にも役立ちますので、自覚症状のある方もぜひ参考にしてください。

  • 適度な運動と規則正しい食生活を心がける

    適度な運動を心がけ、暴飲暴食を控え、栄養バランスのとれた食事を摂り、何より毎日規則正しい生活を送ることが大切です。
    特に30代を過ぎた男性は体に脂肪がつきやすくなり、同時に加齢により喉や首回りの筋力も衰えてくるので注意して下さい。

  • 過度な飲酒をしない

    アルコールには筋肉を緩める作用があります。
    そのため、特に寝る前にお酒を飲むと睡眠中に気道の筋肉がゆるみ、舌が気道側に落ち込みやすくなります。
    睡眠障害があるからこそ、寝つきをよくするために飲酒をしたいと考える方もいらっしゃるかも知れません。
    実際、寝る前に飲酒をすることで寝付くまでの時間は短くなりますが、時間が経過すると眠りが浅くなっていくため、結局睡眠の質が低下してしまうのです。

  • 喫煙を控える

    タバコの煙により⿐やのどの粘膜に慢性的な炎症が起こり、上気道がむくんでしまうため無呼吸症が発生しやすいと考えられています。
    禁煙によって無呼吸症候群の症状が若干改善したとの報告もありますので、自覚症状のある喫煙者はこれを機会に、禁煙に取り組んでみるのも良いかも知れません。

  • 口呼吸から鼻呼吸へ変える

    口呼吸の場合、鼻呼吸の時よりも咽頭が狭くなってしまいます。
    そのため上気道が閉塞しやすい状態になり、無呼吸を起こす危険性が高まるのです。
    また口を閉じることで唾液による口腔内の浄化作用が高まったり、鼻呼吸による雑菌除去、それらによる免疫力向上も期待できるため、呼吸は鼻から行うほうが望ましいと言えます。

 

最後に

無呼吸症候群は、その病単体だけではなく日常的な負担や生活習慣にも繋がります。
意識の無い時に呼吸が止まるだけでなく、重度の合併症を引き起こす可能性があるのです。
しかし、睡眠時無呼吸症候群には多くの症状があり、それが早期発見の手助けになるかも知れません。
無呼吸症候群が重篤化する前に、合併症を発症する前に、今回ご紹介した症状に心当たりがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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